10月3日以前の大瀬崎観察日記

10月12日 天気:快晴のち曇り 風向:北北西のち北 風力:3→2


井上さんより調査期間中に撮影した写真を提供していただきました。順次アップしていきます。
今年は、福江島の景色を背景にハチクマの群れが舞うことが多かった。
ただ残念なことに、早朝の渡りは光線状態が良くないため、ハチクマの群れがシルエット状態になる。
(井上)


写真:島山島を背景に旋回するハチクマの群れ・1(9月22日)


写真:島山島を背景に旋回するハチクマの群れ・2(9月22日)


写真:ねぐら場所を探して帆翔するハチクマ・♂ (9月28日)

10月11日 天気:晴 風向:北 風力:4→2


7、8、9日は荒天、雨天でしたが、10日はよく晴れて渡りに最適の北よりの風が吹いていて
6日に滞在したハチクマは渡ってしまっただろうなと思いましたが、今日も3ケタでました。
やっと涼しくなりました。半袖だと少し寒さを感じます。 (出口)

10月10日


速報 (・・・)観察個体数についての解説

各地の「タカの渡り・速報」では通常、渡りを確認した個体数のみが記載される。
福江島速報では今回より、渡り個体数のほかに(・・・)で観察個体数を表示するようにした。
これは、福江島は特有の事情があるので解説しておく。

福江島では、島内に滞在していたハチクマが早朝にねぐら立ちして、次々と西方海上へ渡っていく。
通常は、まだ薄暗い6時過ぎから、9時過ぎまでの時間帯だ。その後は、しばらく静かになるが
11時を過ぎたころから九州本土を飛び立ったとみられるハチクマが飛来するようになる。

12時から15時くらいのあいだに、次々と多くのハチクマが飛来するのであるが、そのほとんどは
西方へは渡らずに、福江島に降下して休息する。これらの個体が、翌朝以降の渡り個体となるので
ある。したがって、同じ個体を2度観察することもあるわけで、必然的に観察個体数は多くなる。

速報の観察個体数 = 渡りを確認した個体数 + 福江島への飛来を確認した個体数で示してある。
もう一度、速報を見てほしい。渡った個体数だけの表示では、大瀬山で観察できるハチクマの数を
示すことができないことをおわかりいだけるだろう。
大瀬山の魅力は、これまで数字に示されなかった、午後に飛来したハチクマの群れが順光を浴びて
舞う光景なのかも知れない。(井上)

写真家・津田堅之助さんが「五島列島福江島大瀬崎のハチクマの渡り」と題して、大瀬山で奮闘
する様子を、RKB毎日放送が取材しています。
この放送はローカルなのですが、いまインターネットで公開され、全国で見ることができますの
で紹介します。大瀬山の雰囲気をご堪能ください。
http://news.rkb.ne.jp/rkb_news/archives/007616.html


写真:朝焼けの空を飛び立つハチクマ(9月21日)


写真:七ッ岳を背景に旋回するハチクマの群れ(9月22日)
福江島を代表する連山(七ッ岳)を背景にして、ハチクマを撮影するのは長年の夢だった。
七ッ岳は、渡りの移動方向とは異なる位置関係なので、この方向に群れができるのは、極めてまれな
ことである。この日は出口さんと石井明子さんにカウントを任せ、彼の70−200mmを取り上げ
て、夢中で撮影した。お蔭様で念願叶いました・感謝


写真:玉之浦湾を背景に旋回するハチクマの群れ(9月22日)

10月8日


福江島の渡り調査に際しましては、たくさんの方に応援していただき感謝申し上げます。
大瀬山の渡り調査は引き続き、福江島在住の出口さんが継続されていますが、仕事の都合で毎日の
観察は無理です。その点をご理解ください。

福江島渡り速報を開かれて、情報更新されていないと寂しい思いをされるのではと思い、大瀬山で
撮影した画像を、少しずつですが紹介していきます。「大瀬崎観察日記」を時々覗いてください。
今日は10月4日の写真から3枚を紹介します。(井上)


写真:朝日を浴びて飛翔するハチクマ幼鳥・「そのう」が大きく膨らんでいる。
福江島で採食しているとみられるが、何を食っているのだろうか?
島内にはアカテガニがたくさんいるので・・・・?


写真:旋回するハチクマで混雑する、大瀬山上空


写真:格好いい飛翔を披露するオオタカ幼鳥

10月6日 天気:快晴のち晴  風向:東 風力:1


例年ならこの時期、ハチクマの渡りは終盤になり個体数が大きく減少するのだが、今年はどうしたこと
だろう? 
今日も402羽(注:12時までの記録です)の渡りを記録して、減少傾向をみせない。
今朝も北側海上の遠くを渡る個体が多かったが、大瀬山にも十数羽の群れが時々飛来して、旋回して
くれた。また、衛星追跡の発信機を装着した個体3羽が通過して行った。
このうち2羽は8羽の群れの中におり目視できたし、1羽は写真記録に成功した。
ハチクマが、大瀬崎周辺を通過する確率の高さを証明する出来事と言える。

今朝は、島内の顔なじみになった方々が、調査最終日ということで見送りに来ていただいた。
感謝、感激である。昼過ぎに大瀬山を後にした。(井上)


写真:力強い羽ばたきで渡っていくハチクマ・♀


写真:大瀬山上空で、ハシブトガラスに蹴りをいれられるハヤブサ

10月5日 天気:快晴のち晴  風向:東 風力:2〜3


今朝は、北側海上の遠くを渡るハチクマを見送った。
台風15号が接近中だというのに、福江島の天候はそれを感じさせない。
海上のうねりが高くなって、海岸線に打ち寄せる波しぶきが白く輝く程度のことだ。
今朝、福江島を飛び立ったハチクマが、中国大陸に上陸できるのは三日後の10月7日になるはずだ
(衛星追跡のデータによる)。
台風に吹き込む風に乗って、より早く着ければよいのだが・・。彼らの無事を祈りながら見送った。

さて、長かった渡り調査も予定最終日の10月6日を迎えることとなりました。
渡り個体数が減少しなければ、もう少し長く調査する予定でしたが、台風接近となれば中止せざるを
えません。残念ですが、明日の観察を最終とします。
その後は、地元在住の出口さんが、渡り終了まで見届けてくれるはずです。
午後は、大瀬山山頂の機材撤去やあとかたずけを済ませ、撤退準備が完了しました。(井上)


写真:朝焼けの空を舞うハチクマ(10月2日)


大瀬山にはいろいろな種類のタカが飛来する。オオタカもその一つだ。
ハチクマの渡り調査中に飛来するオオタカは、不思議なことに、そのほとんどが幼鳥である。
また、本土のオオタカと比較すると、体の大きさが一回り大きいような気がする。

これまでに、大瀬山から海上へ渡った記録はないが、アカハラダカやサシバと同じく、富江町あたり
から南方向に渡っている可能性は否定できない。
写真は10月4日の個体。
尾羽先端部の擦れ方は、野生の自然な状態ではないような気がするが・・・? 
誰か詳しい方・教えてください。(井上)


写真:大瀬山に飛来したオオタカ


風力発電に関して

五島列島はたくさんの渡り鳥が通過する島である。
写真でも紹介しているとおりハチクマやアカハラダカ、サンショウクイ、コムクドリなどなど
たくさんの種類と個体数が渡っていく。

この島々にいま、風力発電施設の建設申請が相次いでいる。
福江島でも既に認可が下りて、補助金交付待ちの予定地がある。その建設予定地は、数多い
渡り鳥の移動経路であったり、採餌場所であったり、ねぐらであったりする。
環境にやさしいエネルギーとされる風力発電機は、空間を飛翔する鳥類にとって脅威であることを
ぜひ理解してほしい。

写真は、風力発電設備を背景に飛翔するハチクマの群れである。
実際には、このハチクマの群れと風力発電機とは、数kmの距離があり、直接の影響はないが
渡り鳥の群れが通過する島に作られた風力発電機であることを示す、象徴的な写真として紹介する。

奥に見える風力発電機の周辺には、たくさんのカラスバトが生息している林があるほか
アカハラダカがねぐらにする林もある。
この風力発電設備の環境影響評価書には、カラスバトの文字さえ記されていなかった。(井上)


写真:風力発電設備を背景に飛翔するハチクマの群れ

10月4日 天気:快晴のち晴  風向:北東のち北北西  風力:1→3


大瀬山山頂は弱い風があるが、標高の低い所はほとんど風がない朝を迎える。
上空は快晴だが霞があり、視界がはっきりしない。

通常なら飛び始める6時半を過ぎても、ハチクマはまったく動かない。
7時前になってようやく、海上を低く羽ばたきながら北西に渡る個体が8羽出た。群れではなく、それ
ぞれが単独で渡っていくから驚かされる。
その後は全く動きのない静寂が続くが、7時半を過ぎたころに北側の海岸線に50羽ほどの群れが
できた。
その群れが低いままに大瀬山に向かって進み、東側の谷筋から上昇してくる。周りはハチクマで
いっぱいになった。
風がほとんどないので動きがゆっくりで高くは上がらず、50mほど上の同じ所で旋回を繰り返す。
この群れが西海上に渡った後は、北東の島山島で旋回していた200羽ほどの群れが大瀬山に移動して
きた。
再び東側の谷筋から舞い上がり、上空に大きな群れができる。
風が無いせいなのか、旋回を繰り返すばかりでなかなか西へ渡らない。やがて群れの一部が渡り数が
減ると、北東から別の群れが来て合流し群翔を繰り返す。
このような光景が約2時間続いて、約700羽が渡っていった。

大瀬山で観察を続けて12年目になるが、このような光景を目にすることは数年に一度のこと、貴重な
体験をした。
午後の飛来は150羽ほどで数は少なかったが、大瀬山上空への接近が多かった。
私一人なのでハチクマも警戒せずに通過する。最短は電柱1本ほどの高さを5〜6羽が飛んだ。
(井上)


写真:大瀬山上空を舞うハチクマの群れ


写真:東側の谷筋を旋回上昇してくるハチクマ


写真:大瀬崎のハヤブサ・今日は求愛行動を披露してくれた。